物価の高騰が社会的な問題となっている今、運送業界では運賃値上げの追い風が吹いていると言える。
しかし、このような雰囲気のなかで、逆に運賃値下げを求める元請運送事業者も存在するようだ。
大阪府門真市に本社を構える運送事業者。今年2月、同業者から、大手運送会社の下請け仕事で大阪府内での配送と荷物保管の依頼を受けた。「採算が取れるのか不安な料金ではあった」ものの、作業面の負担は依頼側が担うとして業務がスタート。
納品は深夜12時、デリバリーは午前4時からというスケジュール。結果として深夜の倉庫作業と積み込み作業が発生し、ドライバーの拘束時間が長くなった。さらに、荷物の一時保管にも当初予定していた倍の面積が必要であることが発覚。「正直、利益がない状態だったが、開始してすぐに『約束が違う』とは言えなかった」。契約書を結んでおらず、口約束であったことも仇となった。
厳しい条件で配送業務を行っていた同社であったが、4月に入り、依頼元の同業者が突然、値下げを要求。「当社としてはとても受けられるものではなく、月末でその仕事から撤退した」。
「何度も『口約束では判断に困る内容もあるので、契約を交わしてほしい』と要望していたが、最後まで応じてもらえなかった」。「現在、依頼元の運送事業者が自らその業務を行っていると聞いたが、やはりデリバリーで苦労している模様」と話す同社社長。
「考えていたほど簡単な業務ではないことをいくらかでも理解してくれただろうか。2024年問題だけでなく、ありとあらゆる資材の高騰など業界全体が問題山積のなか、運賃値下げ要求は本当にあり得なかった」と怒りを露わにする。
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